光のラナンキュラス

Act.12 私は戦う、俺は識る


 一歩を踏み出した勇気に称賛を。
 例え、違う方向に歩みだしたとしても道は緩やかに曲がりくねって交差する。迷うことはない、ただ歩き始めれば良いだけのこと。その一歩が埋もれた歴史を開く手となるのだから。

「《我等は仇を為す者を敵と見なし、天に制裁を求めて祈りを捧ぐ、貫け雷鳴よ!》」

 印を組まれた小さな手から放たれる巨大な紋章は空へ吸い込まれるように消えると追い掛ける兵士に向かって雷を撃ち落とす。悲鳴を上げる兵士達も次第に声を失っていくがそれは感電したせい。金属の鎧を身に纏った彼等には電流は瞬く間に体を駆け抜けていった。

「早く来いよ!」

「私は大丈夫だから早く船へ乗って!」

 迫り来る兵士を軽々と退けて見せるクレアはにやりと笑うと強烈な蹴りを兵士の腹に叩き込んでは身を翻し、腰に装備していた銃を取り出すと小さな声で詠唱を始めた。それを止めようと前へ出るテオフィールの腕を掴んだエリクだがその手を振り払われてしまう。イーナの無謀な行動を黙認した感情の高ぶりの所為か、感情的なテオフィールを止めることは難しかった。気心が知れているからこそ自分の感情を素直にぶつけてしまうのだろう。複雑な表情を浮かべるエリクにフィリーネはそっと首を振ると先に船に乗るように促した。

「お手並み拝見だな……クレア」

 木陰にしゃがみこんで一人戦うクレアの姿を見つめる。弓をつがえて兵士の喉元を狙いつつも騒ぎ始めた辺りにじっと息を殺していた。

「大人しく投降すれば命は保証する!」

「だーれが従うものかっつーの! 《全ての罪を我が背に背負い、彼等に落ちるは天帝の裁き!》」

 銃口から組成される魔方陣は素早く分裂し、更に巨大な魔方陣へと姿を変えていく。晴天だった空を見上げれば灰色の雲が瞬く間に空を占めていった。急激な天候の変化に思わず鳥肌がたった。精霊魔術の強大すぎる力、もしくはこの少女の能力のせいだろうか。自然の理を操るその力にフィリーネは一抹の不安を抱いた。

「投降するのはあんた達よ!」

 心の底から沸き上がる憎しみを糧にして力一杯、引き金を引く。大樹の幹ほどもあろうかという大きさの雷で出来た柱が兵士に向かって放たれた。悲鳴も上げることも無く消え去った兵士達は恐らく対魔道士の防具を身に纏っていた筈だろうがそれさえも無と還した力。天候の力を後ろ楯にしてこそ成せる精霊魔術を前に唖然とするしか無かった。

(――自分の力を過信してたかもな)

 心の何処かに潜んでいた優越感が音を立てて崩れ去っていく。力の無い者に対して何処か一線を引いたように接し、同じ血族の者に対しては無意識に哀れんでいたのかもしれない。きっとクレアの力は生来持っているものなのだろう。精霊魔術を間近で見たばかりの彼女にはその強さの度合いが分からなかった。平然とテオフィールと並んで歩いて来るクレアにフィリーネは矢を収める。
「魔術にも特性があるんです。精霊魔術は攻撃的、聖歌魔術は補助的、祈祷魔術は回復的。力は全ては術者の心のままに……――」

 動くんです、と言って急に膝を付く彼女に慌てて肩を触れば電気が走った。火傷をしたような衝撃に手袋をしていたことに感謝する。喋るな、とだけクレアに告げると片手で彼女を小脇に抱えた。

「すみません……」

「お前が孤軍奮闘しなくても俺達は戦える」

 苛々したよなテオフィールの言葉にクレアはそうでしたね、と笑ってフィリーネを見上げる。暫くすれば動けます、とだけ告げると彼女は漸く大人しくなった。先に船に着いている筈のエリクといえば木にもたれ掛かれながら三人が来るのを待っていたようである。だが、クレアのぐったりとした状態を見るなり、慌てて駆け寄ってきた。

「ど、どうしたクレア!」

 顔も上げられないのかとしゃがみ込んで彼女の顔を覗き込めばひょいっと紫暗の瞳と眼が合った。

「そーんな心配されたら更に痺れちゃうじゃないですかー。私、ばっちりエリク様に惚れましたから!!」

「はぁ!?」

 うっとりした表情を浮かべて抱えられているの腕の中でくねくねとして見せるクレアに思わずテオフィールは抱えていた手をぱっと離した。 重力に従って鼻から地面に落ちたクレアは痛ーい、と呟きながらもぞもぞと起きあがる。エリクと言えば赤面を晒しながら口をぱくぱくしていた。

「お、俺は――!!」

(何と分かりやすい馬鹿だ)

 慌てて誤解を解こうとして意味不明な事を口走っては誤解を深めてしまうという葛藤をしているのがよく分かる。仕事をしている時も自分のペースややり方を変えないテオフィールを気遣って、いつも変えるのは エリク。だが、こうして見ているのも悪くない。
 そっとフィリーネを盗み見れば、彼の予想通りに二人に背を向けて船を見つめる彼女の姿。テオフィールはそんな彼女の肩を人差し指でちょいちょいと突くと船を指差してゆっくり歩き出した。

「参考までに聞きたいんだが、俺はレイヴァス王国に居た記憶は無い。何か思いつくこと無いか?」

 微かに聞こえる悲鳴に似たエリクの叫びを背後に聞きながらフィリーネは眉を顰める。だけども時々後を苛つくように気にしていたのを彼は確かに見ていた。

「レイヴァス王国は民にまで魔術が広まっている。それなら記憶を操作するものがあってもおかしくないわ……そう、お守りとかずっと身に付けているものに施すでしょうね」

 言われてみれば幼い頃、自分の背とエリクの肩に似たような紋章が彫られていたな、とぼんやり思い出す。鏡を見ない限り目にすることはないし、幼い頃のエリクは寒がりだから肩を出すことはあまり好まない性質だった。

「記憶封じの魔術は術者にしか解けない。もしも……術者が亡くなった場合、一生解けることは無いわ」

 その言葉は余りにも重かった。自分の記憶や痕跡を誰が封じたのかは分かっていない。ただ一つ分かっているのは父親、否――養父がレイヴァス王国に関わっていた人間だということだけ。

「それなら俺は親父から真実を聞き出すしかない……それ以外に確証は得られん」

 そう言って歩き出した彼にフィリーネは瞳を閉じたままそっと頷いた。動かなくては世は変わらない、知らなければ無知なまま。歩き出せば世界を大きく変えることを覚悟して踏み出した一歩は王たる風格を持っていた。

「行こう、俺達の故郷――ケテルの街へ」



+++++++++



 称賛なんていらない。ただ、人の為に自分自身を役立てたかっただけ。そして自分の存在意義をその手で触れて確かめたかった。
 闇に染まるような深い漆黒の外套に身を包み、兵士達の攻撃を避けては渾身の魔術を叩き込むの繰り返し。倒れてしまいそうな体を支えたのは、生きて再びあの優しい青碧の瞳が見たかったから。背中を預けているカイザーでさえも肩で大きく息をしているくらいだ、イーナも気を抜けば気を失いそうだった。

「《大地を支える数多の水流よ、罪を洗い流す聖水となりて降り注げ!》」

 覇気のある声を耳にして、慌てて杖を振りかざす。ここまでして兵士達を相手にする理由はただ一つ、仲間達を出来るだけ遠くに逃がすため。生きて会えれば再びブリガンティアは組織として動くことが出来る。圧政を行う宰相に対して憤りを覚える者は数多いものの、実際に行動に移す者達は数えるほどしかいない。それは民衆を限界まで追い詰めている証だった。

「《全てに凍てつく抱擁を与え、眠りへ誘え》」

 全ての力を込めて放たれた凍える息吹に水が凍って足の自由を奪う。急激な温度変化に倒れていく兵士を見ながら必死で息を整えた。だが、二人の苦々しく向けた視線の先には未だほくそ笑む紫暗の瞳の男。

「また何処かに出奔したと聞いていましたが……こんな所にいましたか、カイザー」

「へへ……王国兵、いや、あんたの私兵に魔法ぶっぱなすのは意外と楽しくて癖になるんだよねぇ」

 舌を出してにやりと下品に笑って見せれば紫紺の瞳の男――ライナルトは嘲笑するような笑みを浮かべた。そんな二人に誰もが息を飲んで見つめる。本来ならば互いに協力し、王を支える立場にある筈の貴族が睨み合っているのだ。真実を知らなかった兵士達の中には項垂れる姿や彼に罵声を浴びせる者、様々な姿が溢れかえっていた。

「全く貴方と言う人は面倒ばかり起こしてくれますね」

「悪いな、趣味だ」

「……ならばそのような無駄な趣味はそこまでにしていただきましょうか」

 ゆっくりと目を細めたライナルトはそっと手を翳すと渦巻く強風を放つ。ばさりと強制的に外された外套に抵抗すること無くイーナは彼の姿をじっと睨み据えていた。

「やはり貴方でしたか、忌々しいドレッセル家め。あなた方の魔力を感じるだけで過去を思い出しますよ」

 かっと見開いた紫暗の瞳に風が呼応して鎌鼬を呼び寄せる。強烈な衝撃に吹き飛ばされそうになりながらも必死で歯を食い縛った。ここで膝を付けば負けを認めたも同じ。どうしても負けたくなかった。

「くくく……さぁて、年貢の納め時ですよ、宰相閣下? ドレッセル家の再興……今度潰されるのはお前かもな」

 銀糸を掻き上げて笑うカイザーに予想に反して笑みを浮かべるライナルト。イーナの心に嫌な予感が浮かぶ。

「ならば、宰相の名においてドレッセル家後継者を保護しましょう。これこそ……主座の役目」

 そう言って微笑んだライナルトは手を翳す。するとイーナの回りに巨大な魔方陣が浮かび上がる。それから逃れようとした瞬間、巨大な風の柱が彼女を包み込んだ。

「な、何!?」

 柔らかく渦巻く風に手を触れようとするとカイザーが慌てて叫ぶ。急いで引っ込めたが指先は風に触れてしまったらしく、ぱっくりと裂けていた。

「私からの再興の捧げ物ですよ、ご令嬢。貴方には餌となっていただきます、王子様のね」

「てめぇ……!!」

 今にも掴み掛かろうとするカイザーに直ぐ様兵士達の剣先が彼に向く。権力を盾にして自分の思い通りにして笑うライナルトの姿やそのせいで涙を流す人々の姿を幾度と無く見てきた。自分の過信と彼女の家名にどうして自信を持ってしまっていたのだろう。それは明らかな自分の失態だ。

「カイザー、行って」

 その言葉に振り返れば真剣なイーナの表情。自分がこれからどうなってしまうのか、その先に絶望を見い出した顔つきでは無かった。

「貴方が私をどうしようと……きっと貴方を倒すわ!」

 ――信じているから。
 真っ直ぐライナルトを見据えた猩々緋は散々憎んだ男の姿と重なった。もう忘れようと何度も思うのに忘れられない思い出。ライナルトは歯を喰い縛ってイーナから無理矢理、視線を逸らすとカイザーに冷たく言い放った。

「忘れるな、人質はご令嬢だけじゃないのです。貴方の大切な従姉殿……ブリガンティアとの繋がりを証明次第投獄します……それとも彼女にそそのかされましたか?」

「ユーディトを侮辱することは俺が許さん! 俺の独断で全て動いてる。悔しかったらこの首、取ってみな!」

 憤怒の表情を浮かべて言い返すカイザーにライナルトはくすりと笑う。どうして同等の地位に居る者なのに手を取り合う思想をそこまで否定するのだろう。その理由はただ一つ。

「力があるから、頂点を目指すのです。王子と仲が良かった貴方なら分かるでしょう」

「分からないね、力があるからこそ支えるべきだったんだ」

 幼い頃から父親に言われ続けていた言葉が鮮明に蘇る。人を支えるには自分も強く在らねばならぬ、支える人が強ければそれは尚更。

「この酔狂な舞台、出来上がった時が終幕となるでしょうね」

 そう言って緩やかにお辞儀をして風と共に何事も無かったかのように姿を消したライナルトと兵士達。咄嗟にイーナがいた方向へ振り返るがそこにはもう何も無い。飛ぶ鳥は跡を濁さず、全てを破壊していったのだった。



+++++++++



 大丈夫とは言ったけど本当は怖くて堪らない。あの宰相に負けたくなくてただ気丈を装っていたけれど恐らくそれは簡単に見破られてしまっただろう。これからどうすれば良いのか分からないことがこんなに心細いのを改めて痛感した。
 風に乗って勢いよく空を駆ける魔術。幾重にも折り重なる雲達を越えて見えてきたのは四方に塔を抱えた城の姿。何十年か前は栄華を誇っていただろうその姿は今は暗い影を落とし、国が滅ぶ姿を嘆いているように見えた。下の景色を見下ろせば出迎えらしき人がこちらを見上げている。太陽に煌めく銀髪が靡いてとても美しい女性、隣には白髪の老紳士が背筋を伸ばして立っていた。

「お戻りか、宰相」

 予想していたよりも低く太い声音で語り掛ける老紳士を不安そうに見上げる。こちらに全く視線を向けない代わりに黙ったままの女性は少し驚いたようにイーナを見つめる。

「手間が掛かりそうな土産付ですけども……役に立ってくれるでしょう。何て言ったってドレッセルの生き残りですから」

「なんだと?」

 怪訝そうに此方を見た老紳士の視線に耐えられず背を向ける。まるで檻に入れられた動物のような扱いに自分が人間でなくなったような気がしていた。

「この少女、どうなさるのかしら?」

「そうですね、政治を司るデーベライナーの代わりに仕事をしているのですから、世話係でもやってくれると嬉しいですね。死に行く者に侍女を付けるなど……勿体無い」

 その言葉にぴくりと反応を示した女性の手をイーナは確かに見ていた。この宰相と肩を並べるほどの女性だ、侍女紛いの仕事などプライドが許さないだろう。振り返って様子を観察してみればカイザーと同じ瑠璃色の瞳が強く燃え上がっているように見えた。だが、彼女は瞳を閉じると一息付き、じっとイーナを見つめる。

「今日から王宮に泊まり込みですわね」

 ふと溜め息を吐いて、控えていた兵士に扉を開けなさいと告げると呆然と見上げるイーナに手を差し出した。掴んだ掌は冷たくて、まるで人形のような顔立ちが間近にあることに思わず眼を逸らした。

「この娘……何に利用するつもりだ」

「あぁ、噂の一掃ですよ。偽者の王子を立てて即位させようと企む一派があるので潰そうかと」

 取り潰しの家を利用できるのはこれくらいしかありませんからと笑うライナルトを目の前にイーナは唇を噛み締める。笑って互いに腹の探りあいをする貴族がどうして有力な立場にいなくてはいけないのか分からない。街に行けば汗水垂らして働いて、賃金を得て生活している人もいると言うのに血統が良いだけで全てが免除され、何もしないで権力を手に入れる。魔物に苦しむ人たちを省みない行動に悔しくて涙が溢れそうだった。

「そう言えば……ユーディト、最近従弟殿に会いましたかな?」

「会っていませんわ。あの子は少々放浪癖がありますから」

 いつものことですわ、と口許に手を当てて微笑む女性――ユーディトは腰に手を当てた。

「ならば、少し鎖で繋いで置いた方が宜しいのでは」

「あら、差し出がましい御言葉ですのね……あの子を干渉することが私に出来ましょうか?」

 のらりくらりとやり過ごして余裕の表情を浮かべるユーディトに苛立ったのか舌打ちして背を向けるライナルトは一度もイーナに視線を合わせることはなかった。

「ユーディト……儂は法に触れれば主を裁かねばならぬ」

「分かっておりますわ、クラウス様」

 眉尻を下げる老紳士――クラウスにユーディトはそっと首を振る。蚊帳の外に放り出されたイーナはただ何も出来ぬまま二人の会話を聞くしか出来ない。ただ分かったのが二人ともライナルトにいい加減うんざりしていること。それだけは確かだった。

「行きましょう」

 そっと声を掛けられて先を歩くユーディトに静かについていく。優雅に背筋を伸ばして突き進む姿は自信に満ち溢れていて、兵士達は擦れ違う度に敬礼をして敬意を表す。その姿に彼女は力の強い――兵士達を従える程の女性なのだと認識した。

「お待ちを!ユーディト様」

 振り返った彼女に何処かうっすらと浮かんでいた笑みの意味は良く分からなかった。ただ、此方に走り寄る男女はどちらも形式ばった装いで旅人の服装のままのイーナにさえ礼を取る。どう返したら良いのか分からぬまま男が口を開いた。

「話は聞きました。ですが、お分かりでしょうか……王宮に止まるのは」
「同時に監視される。分かっていてよ……だけど此方も下手な手出しをさせる気は無いわ、ヘンゼル」

 本人が納得しているなら傍観者に徹するしかない。そう溜め息を吐く青年に少女が詰め寄る。

「ユーディ、危ない。家、帰る!」

 たどたどしい言葉ながらも青年――ヘンゼルを蹴り飛ばす少女は今にも泣き出しそうな表情を浮かべている。すっころんだ青年――ヘンゼルは腰を打ったらしく顔を顰めながらもよろよろと立ち上がった。

「お止め、グレーテル。私は大丈夫……貴方達はやるべき事をやりなさい」

「ですが……!」

「私が隠れ蓑になるならその役引き受けるわ。ただ大きさは保証出来なくてよ?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべて肩を竦めるユーディトの姿にこれ以上は何も言うまいと歯を喰い縛るヘンゼルは嫌がるグレーテルを連れてその場から走り去る。一度下した決断を決して撤回しないからユーディトは信頼されてきた。でも今回ばかりは無謀であることは彼女も承知だろうに。

「彼等は……?」

「家長補佐の一族よ……さぁ、中に入って」

 彼女に促されて足を踏み入れたのは客間らしき部屋。こじんまりとした装飾や家具に内心ほっとした自分がいた。

「私達……主にやるべきなのは私なのだけれど、デーベライナー家は元々国王が行う政治を代理で行ってきた家なの。だけどそれには勿論知識や情勢を完璧に知る必要がある。それを補佐してくれるのが彼等よ」

 ぼんやりと聞き入るイーナに苦笑を浮かべながらユーディトは手慣れた手付きでクローゼットを漁っていく。何着か寝台の上に放り出された衣服はどれも上等な絹で作られたものばかり。

「暫くは動けないわね……困ったわ」

 服を選びながら考え込むユーディトは特に着替えようという気はないらしい。ただぼんやりと考え込むのに必要があるのだろう。イーナは立ち上がると窓辺に座り込む。くたくたに疲れきった体なのに気持ちだけが前に進もうと急いてしまっている。沈み行く夕陽をぼんやり眺めながら焦る気持ちを押さえ込んだのだった。


次へ
戻る